みなさまこんにちは!事務局の金でございます (*´∀`*)
本格的に暖かい日々が続き、春の匂いがしますね!
本日のインタビューはいよいよ日本の曲、「花は咲く」です。
日本語で歌うことについて、坂下の哲学が聞ける面白いインタビューでした!
どうぞお楽しみくださいませ!
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ー春になりましたね。花見はしましたか。
(坂下)最近雨の日が多く、忙しかったのでちゃんとした花見はできませんでした。でも天気の良い日の夜に一人で自転車に乗って、丸の内から九段、千鳥ヶ淵、竹橋を回りました。綺麗でしたよ。
ー東京の桜も満開ですし、今日は「花は咲く」について聞きたいと思います。アンケートで同率2位でしたが、この曲はランクインすると予想していましたよね。
(坂下)そうですね。有名な曲ですので。
ー2011年の震災のテーマ曲でもありましたね。この曲をアルバムに入れようと決めた理由は何ですか。
(坂下)この曲を直接CDに入れようとは考えていなかったです。というのもこの曲は難しくて。合唱曲なので一人で歌う曲じゃないんですよね。音域が広いので。大人数で子供の合唱とかでよく歌われるのでまさか自分のアルバムに入れるとは思っていませんでした。でも、ピアニストの江澤さんがこの曲を入れたがっていたので(笑)。ピアノの旋律が綺麗なんですよね。それでいざ録音してみたらなかなかよくて。本当に最後の最後に入れることを決定しました。
ーそれまでコンサートでも歌ったりはしていませんでしたか。
(坂下)歌いませんでしたね。歌いにくくて有名な曲でしたし。有名というのもあるし、正直言うと、最初はそこまで惹かれる曲ではありませんでした。演歌の人が歌ったり、オペラの人が歌ったり、一つの曲だと思えなかったというか、あまり集中できませんでした。だけどある日、歌詞をちゃんと見てみたらすごく良い歌詞だなと思いました。
ーどこが良かったですか。
(坂下)「傷付いて傷付けて報われず悩んだりして」「今はただ愛おしいあの人を思い出す」。すごくないですかここ?後もう一箇所あります。「誰かの未来が見える悲しみの向こう側に」。あ、あともう一つ。「いつか恋する君のために」そして…
ーほとんど好きですね(笑)。確か歌詞は映画監督の岩井俊二さんのですよね。彼の映画は私もとても好きです。では、この曲を歌う時に心がけたことはなんですか。
(坂下)そうですね。やはり今は辛い状況の曲だと思いました。「花は咲く、花は咲く、悲しみの向こう側に花が咲く」と。今、生きていることが順風満帆ではないところに立っている。こんな時に人って朗々と歌うような気分にはなれないですよね。そういう感情を込めて歌いました。音程が難しかろうがそれが前面に出たくないなと思って。歌ってるんだぞという感じではなくて感情を語るように。
ー淡々と歌ったという感じですか。
(坂下)うーん、淡々と…淡々とではないですかねぇ。辛い時というのは、胸も開かないですよね。だから声も出ない。それを表現することを意識しながら歌いました。テレビで流れる時にはみんなの願いといった感じでしょうけど、実際歌ってみたらこの曲は素朴な一人の願いとして歌うことでいいんじゃないかなと思いました。そして自分自身に言い聞かせてるという意味合いも込めて。素朴な一人の人間の感情を表現することに切り替えてみたんです。楽器もピアノ一本ですし。
ーそういう気持ちがファンの皆様にも伝わって、愛されているんだと思います。
(坂下)そうですか、ありがとうございます(照)。
ー最初はそこまで乗り気ではなかったこの曲をアラバムの最後のトラックに入れた理由は何ですか。
(坂下)ボーナストラックのような意味合いで最後につけました。他の収録曲の展開とは性格も異なるので。
ー坂下の歌は日本語が綺麗という声をファンの方々からたくさん頂いておりますが、いつから日本歌曲を歌うようになりましたか。
(坂下)ありがとうございます。音大時代にも日本歌曲の授業はあって歌っていましたし、もともと歌謡曲が好きでした。後、例の老人ホームで歌うバイトをしていたことが大きいですね。老人ホームでは一時間プログラムで月2回、その上異なるプログラムを演奏していました。一年だと24個のプログラムをこなす訳です。ベートーヴェンのようなバリバリのクラシックも演奏しますし、キャロルのような宗教曲も演奏しました。その頃からジャンルに関わらず、昔の唱歌や童謡などもものすごく数多く歌っていました。例を挙げると季節の歌とか、4月は朧月とか、5月だと鯉のぼりの曲など。もっともっと知らない曲もザクザク見つけて毎回のコンサートが楽しかったのを覚えています。
ー老人ホームが坂下の音楽生活を広げ、音楽観を決めてくれた気がします。
(坂下)そうそう、そうなんですよね。そこで得たものはすごく大きかったんです。学生の時期でしたが、音大ではまだ別の価値で動いていました。つまり、日本歌曲よりもシューマン、シューベルト、モーツァルトなどを上手に歌って点数を取る。でも老人ホームでは違いましたね。ですから元は正直戸惑いました。こういうので感動するんだ、とも正直びっくりしました…。ですが、懐かしい曲をみんなで歌ったり、聴いている方々が涙流したり。。難しくない曲。この難しくない曲たちは人々の人生を背負っているものなんだなと。だって、ほとんど意識ののないご老人の方々も音楽を聴いて、ふと記憶が戻って、意識も戻って、突然子供だった頃を思い出して話してくださったりして。やっぱり日本の曲なんだな、難しい曲に感動するわけではないんだなと思うようになりました。
ーそれから卒業して海外に頻繁に行って音楽の勉強をしましたよね?
(坂下)はい。桐朋学園卒業後、フランスで色々勉強したりして日本に帰ってきて。「月の光」というフランスの歌を歌ったんですね。歌う前に、MCで曲に対する自分のイメージを説明しました。フランスの風景を考えながら。
そこにはピエロがいて、夜の宮殿の中庭で、マンドリンを奏でている人がいて、大理石の噴水があって…。そしたら日本語ではギャップがあるというか。でもやっぱり歌は演説ではないため、歌詞を事細かく説明しても野暮ですよね。その時、直感で日本で日本人の観客に伝わる歌を歌うためには、お互いの母国語である日本語の曲を歌うのはとても意味のある行為だと思いました。歌いながらそれを思っていました(笑)。それこそインターナショナルではないかと強く思っていました。
ー日本の曲を歌うことがインターナショナルなことであると。
(坂下)英語がペラペラだからと言ってインターナショナルな訳ではないと思います。留学時代に外国人の友達もたくさんいましたが、当たり前な話かもしれないですが自分の国に戻っていくと、みんなヨーロッパの言葉を忘れちゃうんです。あんなに上手だったのに。ただ、それが無意味であるということを言っているのではなく、それは大変素晴らしいことですが、自分の国の言葉で歌うことって素晴らしい意味がそこにはあるのではないですかね。本当の自分ってどこにいるのかなということを考えたら、何ヶ国語で歌うこともいいけど、母国語がやはり一番わかると。
ーでもやはりクラシック歌手というのは外国語の曲を歌うのが常識のようになっていますよね。
(坂下)もちろん、それまでは私も外国語の歌を歌うのがクラシックだと思っていましたし、それにはとても意味があると思っています。その上で日本人として、日本語の情緒を込めて歌うのが、僕の中ではクラシック歌手の一つの在り方だと思ったんです。クラシック歌手=オペラ歌手で、日本人であることがハンディキャップになるからといって、それを捨て、ヨーロッパ人のように振る舞えばいいのか。それに疑問を抱いて、不自然さを感じました。不自然な人には自然な歌は歌えないですもん。不自然だから。当たり前ですが、日本の曲は日本人として歌詞のを考えながら自然に歌えている気がします。
ー母国語で歌うことのメリットをもう詳しく聞かせてください。
(坂下)例えば、「月」という単語。世界各国で歌詞に沢山登場する単語です。神秘的で、美しく、思いを寄せる対象としても出てきますね。日本語の「月」とイタリア語の「ルーナ Luna」だとやはり指しているものが違うと思います。小さい時からその土地で生まれ育って、そこの水を飲んで、野菜を食べて、育ちながら見てきた月のことですから国によって見え方は多種多様だと思います。どれだけ頑張って勉強して、考えても、イタリアで生まれ育っていない僕に、歌詞の中の「ルーナ」の表象を完全に理解することは難しいですよね。その反面、「月」だと色々語れることがあります。
ーグローバル化した今でもやはりそうですか。
(坂下)もちろん今は食べ物でもなんでも、どこでも楽しめますよね。ニューヨークスタイル、パリスタイル、、。身近に存在していてわかった気になるけど、実はもっと遠いものなのではないかな。。僕の使命は日本の文化を愛して、それを伝える歌手でいること。そこに自分の使命があると思います。
ー前回のインタビューで言っていた「歌い継ぐ」こととも似ている気がします。
(坂下)まさにそうですね。歌は文化ですから、文化を受け継ぐ使命を持っていて、文化諸々を受け入れてバトンタッチしていくことが重要だと思います。あと、日本歌曲を歌っている時には自分の感情を出そうとしたことは一度もないんです。
ー自分の感情を出そうとしたことがないとは?
(坂下)歌詞や曲が伝える情緒を考えるのではなくて、感じて、歌うんです。日本語の歌詞と曲が自分の感情を引き出してくれている感じがするんです。例えば「悲しくなった時は」なんかも自分の感情で歌おうとしたことがないですね。
ー自然と感情移入したといった感じですか。
(坂下)移入ではないです。移入というのは感情を入れてそれに向かって出していくことですよね?それじゃなくて、何も溜まっているわけではないのに、歌い終わったあと、「こんな感情も自分の中にあるんだ」と感じられて、曲と一体化した気分になるんです。何も出している意識はありません。自分が何か伝えたいとかではなく、その曲が自分の中に入ってきた時に何らかの感情が自分の中で作られるといった感じですかね。
ー何だか神から啓示を授けるような感覚ですかね(笑)。
(坂下)そこまでは言い過ぎですが(笑)まあ似てるかもですね。自分の器の中が自然と埋まっていく感じなので。だから疲れないですし、気がつくともう終わっていたりします。
ーだから皆様の耳にもナチュラルに入っていき、坂下の日本語曲が好きという方がたくさんいらっしゃるんですね。
(坂下)ありがとうございます。
ーとは言ってもこの曲が意外なことに海外でも反響がありましたよね。
(坂下)そうですね。例えば台湾とかでもこの曲がいいと言ってくださる方々が結構いらっしゃって。台湾にも大地震がありましたしね。まあこの曲の別のバージョンだと英語の歌詞もありますが、日本語の歌詞の私の曲を聞いて頂いて、言葉がわからなかったとしても慰められているように直感で感じられると言われました。嬉しいことですし歌手としての自分の励ましにもなります。
ーなんだかんだ坂下さんは語学堪能ですし色々な言葉も話せますが、グローバル進出の計画はないですか。
(坂下)それはちょっと、金さんに頑張ってもらわないといけないんじゃないですかね。
ー(笑)
(坂下)本気です(笑)。どこで何をしたいというこだわりはないんですが、え、どこでしたっけ、そう、カタルーニャ音楽堂というところでは歌ってみたいなと思いました。すごく綺麗でした。まあ今はインターネットで色々な国のあらゆるものが聞けたり、見れたりする時代ですが、その中でもまずは自分のスタイルを曲げずに綺麗な日本語で立ち向かって行きたいと考えています。日本のアニメやオタク文化は既に海外では大人気で、その業界の日本語を覚える海外の方もたくさんいらっしゃいますが、それとはまた違う日本文化、日本語の美しさを伝えることができればと思っています。
ーわかりました。頑張りましょう。
(坂下)頑張りましょう!未来は明るい!!
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いかがでしたか?今までより少し長くなってしましました!
インタビューも残りあと二曲です!
ご意見、ご感想などは何でも大歓迎です!
それでは次のインタビューもどうぞご期待くださいませ 😉