ヒロイズムinterview 第三位!枯葉

皆様
事務局の金です!みなさまこんにちは!

今日はいくらか暖かい日でした!若干季節外れではありますが、先日のヒロイズムアンケートもいよいよ第3位!枯葉のインタビュー記事です!
どうぞお待たせしました!♪

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こんにちは!本日お話する曲はコズマの「枯葉」です。いよいよフランスの曲ですね。シャンソンを歌うようになったきっかけはありますか?
(坂下)そうですね、日本には素晴らしいシャンソン歌手もいらっしゃいますし、わりと独立したジャンルだと思います。シャンソンは「歌ではなく語りだ」という話もありますよね。ずっとシャンソンを歌ってみたいという気持ちがありましたので、ファーストアルバムに入れることになりました。

ーシャンソンと歌曲はどう違いますか。
(坂下)大衆歌曲と芸術歌曲といった違いですね。芸術歌曲はピアノ伴奏まで一音一音しっかりと描写されてあります。様式美として完成されている芸術ですのでそれ通りに演奏することに意味があります。それがいわゆるクラシックっぽさですね。

一方、シャンソンはコードが書いてあり、後は自由に弾くこともできます。歌もリズムを崩したり、言葉に合わせて音をアレンジしたりできます。シャンソニエでは歌手が歌う直前にピアニストに渡してひそひそと、(今日はこんな気分だから、このくらいのテンポで)とか言いながら、ほぼ即興で演奏されるようです。どちらも興味深いですよね。
HEROismでいうとフォーレ、アーン、プーランクの曲(トラック2~トラック4)が芸術歌曲で、この枯葉はシャンソンですね。

ー枯葉を歌おうと決めた理由はなんですか?
(坂下)音大時代、高級老人ホームで歌う仕事をしていて、その時一緒に歌っていた一人がシャンソンを始めちゃって、シャンソニエに連れていってくれたんです。その時、「枯葉」を聞いて、これは歌いたい、と思いました。

ーシャンソンを歌うとなった時にクラシックをやっている方々からの反応はどうでしたか?
(坂下)「遊びで歌ってるんだ」「あんなのも歌ってるんだね」といった感じの反応が多かったですかね。でも中には、こういうのをやりたいと思う人もいるみたいで「実は僕もそういうのを歌いたいんですよね」と言う人もいました。でもやはり現在でもクラシック歌手としてシャンソンを歌うという人はたくさんはいないかも知れないですね。ジェラール・スゼーを知っていますか?

ージェラール・スゼー?
(坂下)はい。かつて有名なフランスのリリックバリトン。クラシックもシャンソンも、男性の曲も女性の曲も歌っていたんですよね。あの時代なのにああいうのがよく歌えたのか、または昔だからこそオープンだったのか。僕も彼のように歌ってみたいと思ったんです。そして、実は、スぜーと一緒に音楽活動をしてきたのが、僕の先生のダルトンボールドウィン氏なんですよね。それでダルトンに聞いてみたんです。

ー色々歌ってみたいと。
(坂下)はい。シャンソンとか。そしたら「それはアートじゃない。やめなさい。」と言われちゃって、教えてほしいと言っても全然だめでした(笑)。でもスゼーは歌っていたわけで。ダルトンの伴奏で歌いたくて一所懸命説得したのかなと思うと何だかほっこりしまして。と思うと、私もそういう歌手でありたいと思うんですよね。「芸術じゃない」と言われても「これはいい曲」と説得させる歌が歌える歌手になりたいと思います。

ー坂下の枯葉を作るために努力したのは何ですか?
(坂下)私はそれこそシャンソン歌手ではないので、自分の感覚で語ろうとしました。個性を出すために考えたというよりも、自分のアイデンティティはクラシック歌手であるということを考えながら、いつも歌っているような感情の中で語ることを意識しました。後、「語り」を意識しましたが、朗々とではなく自分の気持ちの中で歌いました。内面に向かって静かに語る。声を大にして歌いたくなかったです、この曲は別れた相手を想いながら、ただ一人、恋の儚さを思う曲ですから。声量を少なくすることではなく、高音のところをディミヌエンドにするなど、本当につぶやくというか、表現としてつぶやきにしようとしました。声楽テクニックの用いてシャンソンの良さを伝えたかったです。

ー坂下さんの声がとても悲しく聞こえる曲ですが、失恋した後に歌いましたか?(笑)
(坂下)前、パリには頻繁に行っていたんですよね。一週間いて、一週間日本に帰って、また行って。そう繰り返す中で、いつのまにか秋が来て、パリに着いた時に枯葉がばーっと落ちたんですよ。パリの秋はじわじわとくるものではなく、突然来るんですよね。大きい葉っぱがどーんと。そういう道を歩くことによって、その曲を身近に感じることができて感情移入しやすかったです。自分の失恋とかではなくてですね(笑)。

ー具体的にはどこでパリの秋を感じましたか?
(坂下)マドレーヌ広場です。素敵なところです。あそこを訪れたらそれはそれは大きな葉っぱが一斉に落ちて。その時この「枯葉」を思いながら散歩していました。今でも覚えているというのは、その風景とこの曲がすごくマッチングしていたんでしょうね。やはり東京の秋の風景ではなくフランス語で作られた曲だからか、向こうの風景の方がしっくりきますよね。

ーこの記事を読んでいる方々も次パリに訪れたらマドレーヌ広場を散歩してみたくなりそうですね。
(坂下)その時にはヒロの「枯葉」を聴いてくださいね(笑)。

ー前回のインタビューから感じましたが、坂下さんは歌を「視覚的に」歌うことが得意な気がします。
(坂下)歌は講義や講演会ではないので、押し付けたり言葉や自分の感情だけを届けても成功しないと考えます。もちろん歌詞も重要ですが、音楽そのものが作り出す情況と雰囲気、空気感。そういうものを伝えたいんです。音楽を聴かれる事で風景が浮かんでくるのを楽しんでいただきたいと思っています。

ーシャンソンは既に和訳されているものが多いと思いますが、フランス語で歌った理由はありますか?
(坂下)私としては原曲通り歌いたかった。原曲の素晴らしいものをそのまま伝えること、それを伝えることがクラシック歌手の役目の一つだと思います。日本語の歌詞も素敵ですが、やはり原語と意味も雰囲気も異なってくる。歌手の役目は新しく作り出して歌う歌い手と、歌い継いでいく歌い手がいて、私自身は後者だと思うんですよ。「歌い継ぐ」ということが自分の使命だと思います。

ーフランス語の歌を歌う時のテクニックは何がありますか?
(坂下)フランス語には母音が16個、つまり日本語の「あいうえお」の3倍の数なんです。なのでまずは母音をつかむのに努力しました。クラシックの唱法というのは母音唱法ですので。母音がないと声が響かないんです。

ーどのように習得したんですか?
(坂下)音大時代フランスに留学していた日本人の先生に教えてもらったこともありましたが、あまりしっくり来なくて。直接フランスに行って母音の勉強をし、フランス人のディクションの先生の顔を真似しながら歌ってみたんです。そしたら歌い方が根本的に全く違うんだということに気付きました。口だけ使って、二次元に母音を発しても閉じた音になって響きが乗らないし、歌にならないんです。舌を使って顔で音を出さなければいけないんです。

ー他に何を気にして歌っていますか?
(坂下)当然のことですがCDに収録する時と大ホールで歌う時には、同じ単語でも違う発音に変換します。特に大ホールでは、普段のフランス語の発音とは異なる巻き舌のRで歌うんです。声を遠くまで届けるために。また、フランス語には鼻音が多く、しかもそれが日本語の助詞の「私が」などと異なり、重要な箇所に入っているんですよね。大きなホールで鼻音のまま歌うと声が届かないので、極端な話、全く違う単語の発音となります。

ー次は母音に集中して聴いてみますね。フランスのシャンソンが日本でも人気がある理由は何だと思いますか?
(坂下)日本にもシャンソンの心境に近いものがあります。例えば「さくら横丁」という日本歌曲。それですよね。終わってしまった恋を語るのではなく、その後どう?と聞いても、終わった後何も始まらない。一人で桜でもみようといった終わったものに対する儚さ。感情を入れるというか感情すらが枯れているような状況の中で、その感情を秘めながら一人で黙々とパリの街を歩くといった状況に共感できる部分があるのだと思います。

ーこの「枯葉」は日本でも色々な方が歌っていますが、坂下バージョン以外にいいなと思うものはありますか。
(坂下)アルバムじゃなくていいんですよね?実は昔、何かのドラマで研ナオコさんが歌ったんですが、それがまた低い声で、しみじみと歌っていて、いいなと思いました。それから淡谷のり子さんも素敵でよく聴いています。

ーこれからも坂下シャンソンを聴いていただくチャンスはありますか?
(坂下)今までも積極的にコンサートのプログラムに入れていましたけど、これからも皆様に良いシャンソンをお届けできるようにライフラークとして歌い継いでいきたいなと思っています。

ーセカンドアルバムにもシャンソンは入るのでしょうか?
(坂下)….お楽しみに(笑)
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坂下忠弘音楽事務局
担当:金
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